ノーコードでもローコードでもない、「バイブコーディング」という選択肢
コードを書かずにAIと対話で開発する「バイブコーディング」。ノーコードとの違い、デザイナーとの相性、実際にやってみて感じた可能性と限界。
バイブコーディングとは
「バイブコーディング(Vibe Coding)」は、AIに自然言語で指示を出してコードを生成するスタイルの開発手法です。2025年にAndrej Karpathy(OpenAIの共同創業者)が提唱した概念で、「コードの細部ではなく、やりたいことの"バイブ(雰囲気)"を伝えてAIに任せる」というアプローチです。
自分はこの数ヶ月間、まさにこのスタイルで開発をしてきました。
ノーコードとの違い
ノーコードツール(Wix、STUDIO、ペライチなど)は、用意されたパーツを組み合わせてサイトやアプリを作ります。直感的で簡単ですが、テンプレートの範囲内でしか作れません。
バイブコーディングは違います。
- 制約がない — React、Astro、TypeScript、何でも使える。技術スタックに制限がない
- 細かい調整ができる — 「この余白を8pxに」「このアニメーションを0.3秒に」といった指定が可能
- 本格的な機能が作れる — OAuth認証、API連携、データベース接続。ノーコードでは難しい機能も実装できる
ただし、ノーコードより「伝える力」が求められます。
ローコードとの違い
ローコードは、コードの一部を書きながらツールの補助で開発するスタイル。バイブコーディングでは、コードは一行も書きません。
代わりにやるのは:
- やりたいことを言語化する
- AIが書いたコードの結果を確認する
- 違うところをフィードバックする
- 繰り返す
コードを読む必要すらありません。ブラウザに表示された結果だけを見て、「ここが違う」「こうしてほしい」と伝える。デザインレビューのプロセスとほぼ同じです。
デザイナーとの相性
バイブコーディングは、デザイナーと相性が良いと感じています。理由は3つ。
1. 言語化の訓練ができている
デザイナーは日常的に「なぜこの色なのか」「なぜこのレイアウトなのか」を言語化しています。クライアントへのプレゼン、チームでのレビュー、仕様書の作成。その言語化スキルが、AIへの指示精度に直結します。
2. 完成形のイメージが明確
「どういう画面にしたいか」が頭の中にある状態で開発を始められます。漠然と「なんかいい感じに」ではなく、「ここにこのサイズでこの要素を置きたい」と具体的に伝えられる。
3. フィードバックが的確
出来上がったものを見て「何が違うか」を言語化する力。これもデザインレビューで鍛えられたスキルです。「全体的にダメ」ではなく「この余白が広すぎる」「この色のコントラストが弱い」と具体的に指摘できる。
実際に作ったもの
バイブコーディングで作ったものの一例です。
- コーポレートサイト — WordPress から Astro に移行。SSR、Basic認証、OAuthまで対応
- ブログシステム — CMS導入、下書きプレビュー、公開フローの構築
- Figma検索アプリ — 数百件のFigmaファイルを横断検索できるReactアプリ
- ポートフォリオ — 制作物の棚卸しからA4ポートフォリオの自動生成まで
どれも「デザイナーがひとりで作った」と言うと驚かれるレベルのものです。実際はAIと一緒に作っています。
限界もある
バイブコーディングは万能ではありません。
判断を委ねすぎる
技術的な選択肢を提示されたとき、背景知識がないと判断できません。「SSRにしますか?SSGにしますか?」と聞かれても、最初は違いがわかりませんでした。AIの推奨に従うしかない場面があります。
デバッグが難しい
エラーが出たとき、自分では原因を特定できません。AIに伝えれば解決してくれることがほとんどですが、「何が起きているのか」を理解せずに進むことへの不安はあります。
大規模な開発には向かない
個人やチームのツール、コーポレートサイト、ブログなどの規模感では問題ありませんが、大規模なプロダクト開発には向かないと思います。コードの全体像を把握している人がいないまま規模が大きくなると、いつか破綻します。
それでも可能性を感じる
限界はありつつも、「自分の手で(AIと一緒に)ものを作れる」という体験は強烈でした。
デザイナーは「作りたいもの」を一番よくわかっている人です。それを形にする手段がデザインツールだけだった時代から、コードという手段が(AIを介して)加わった。これは大きな変化です。
ノーコードの制約に不満を感じたことがある人、開発者に依頼するコミュニケーションコストに悩んだことがある人。バイブコーディングは、試してみる価値があると思います。
参考書籍
バイブコーディングの概念をもっと深く知りたい方には、提唱者の背景にある考え方がまとまったこちらの本がおすすめです。